子供を豊かに伸ばしてくれる先生は、ものさしをたくさん持っています。残念ながら、そのものさしが少ない先生もいます。苦しいのは、子供です。これは、先生という職だけではなく、「親」という役割も同じことが言えます。ものさしを多く持っているお父さん、お母さんに育てられた子は、あきらかに違います。体の奥底からわき上がるような自信みたいなものを持つようになります。
ものさしとは、「その子のいいところを見るものさし」です。「勉強ができる」「先生の言うことをよく聞く」の、二本のものさししか持っていない先生だって世の中にはいるかもしれません。本校の先生方は、とてもたくさんのものさしを持っていますから、安心して下さい。
勉強が苦手な子はいます。でも、掃除はとても一生懸命できます。あいさつが苦手な子はいます。でも、本を読むのが大好きです。いらいらして人に当たってしまう子がいます。でも、そんな子でも、何か仕事を頼むと、最後まで責任を持ってやってくれます。子供はそれぞれ、苦手なことあり、得意なことあり、みんな違った宝物を持っていますから、それを見つけていくのが牧之原中学校の教育。つまり、どの先生も、二本だけのものさしではとても足りないんです。それぞれの先生が、千本のものさしを持っています。
小さい頃から、「だめな子」で通ってきてしまった子がいるとします。それは、少ないものさししかもっていない大人に囲まれてきたからです。おそらく、二本のものさしです。「勉強ができるか」「大人の言うことを聞くか」のものさし。そのものさしだけでその子を見ようとしても、その子はその二つが苦手なことで、本当はもっと違うものさしで見てくれたらいいところなんていくらでもあるのに見てもらえなくて、「だめな子」というレッテルが貼られてしまったかわいそうな子です。勉強ができないからアウトじゃないです。親の言うことを聞かないからアウトじゃないです。だめな子というレッテルは、大人が勝手につけた「大人にとって都合の悪い子」のことです。
残念ながら、その二本のものさししか持たない大人はあふれています。多様性という言葉が浸透し、『別に勉強だけが人生じゃない』と、多様な価値観で人を見ることができる人は確実に増えてきていて、学校という場所にいる先生達も、新しい考え方にバージョンアップしている最中です。親も同じです。わたしたちは、あまり多くのものさしで見てもらえなかった教育を経験しています。ですから、子供を育てるときになるべく多くのものさしを持つことが大事だってこと、気づきにくいんです。そんなみなさんだって、ものさしは増えていますよね。三本目、四本目と、ものさしを増やしていますよね。
わたしたち大人が、たくさんのものさしで子供たちを見るようになると、どうなると思いますか。それは、子供たちの姿ではっきり分かってきます。子供たちだって、人を見るものさしは、わずかなものです。「足が速い」「かっこいい」「かわいい」「勉強ができる」「おもしろい」などの、分かりやすいものさししか持っていませんが、多様な個性を認めてくれる親や先生、地域の皆さんに囲まれていると、子供たち自身が持つものさしの種類がどんどん増えていき、人を認める、人を大事にできる心は醸成され、そして一番大事なことですが、自分自身もまんざらじゃないと、自分への安心感になっていくものではないですか。